結論:コーヒーやお茶を「水分としてゼロ」とする根拠にはならない

カフェインは条件によって尿量を増やす作用があります。一方、日常的な摂取量や習慣的な摂取者を対象にした研究では、コーヒーを飲んだ水分が丸ごと相殺される、あるいは必ず脱水につながる、という単純な結果にはなっていません。

したがって「カフェインが入っている=水分補給にならない」と一律に扱うのも、「コーヒーは水と完全に同じ」とあらゆる人・量・状況へ広げるのも避けるべきです。日常の飲料選びでは、カフェイン摂取量や睡眠への影響、糖分など水分以外の要素も考えます。

BHI(Beverage Hydration Index)は何を調べた研究?

2016年にMaughanらが発表した研究では、健康で水分状態が保たれた若い男性72人を対象に、13種類の一般的な飲料を1L摂取した後の尿排出などを比較し、静水を基準に飲料の短時間の体液保持を表すBeverage Hydration Index(BHI)を検討しました。

この試験では、経口補水液や牛乳で水より尿排出が少ない結果がみられた一方、コーヒーやお茶について4時間までの累積尿量は水と有意な差が示されませんでした。

BHIは「飲み物の健康ランキング」ではありませんBHIは特定条件で飲料摂取後の短時間の体液保持を比較した研究指標です。長期的な健康効果、個人ごとの必要水分量、飲料の総合的な健康価値を順位付けするものではありません。

「カフェインには利尿作用がある」は間違いではない

MaughanとGriffinによるカフェインと体液バランスのレビューでは、特に普段カフェインをとっていない人が多量のカフェインを急に摂取した場合などに、尿量増加が起こり得ることが整理されています。一方で、カフェインへの耐性が形成されることや、通常のカフェイン飲料摂取が習慣的な利用者の体液・電解質バランスを必ず崩すという証拠は支持されていません。

つまり、「カフェイン単体の作用」と「水分を含むコーヒーやお茶を日常的に飲んだときの全体の水分収支」は同じ問いではないということです。

習慣的にコーヒーを飲む人で、水と比べた研究もある

Killerらの2014年のクロスオーバー試験では、習慣的にコーヒーを飲む男性50人が、3日間にわたり1日4回200mlのコーヒー、または同量の水を摂取しました。測定された総体水分量や複数の水分状態指標について、両条件に有意な差はみられませんでした。

この研究は、日常的にコーヒーを飲む対象者で、一定条件のコーヒー摂取が水に比べて明確な脱水を起こしたとはいえない材料になります。ただし対象は男性の習慣的コーヒー摂取者であり、非常に高いカフェイン量、カフェインに不慣れな人、妊娠中、暑熱下での激しい運動など、あらゆる状況を証明するものではありません。

量と状況で利尿作用は変わり得る

カフェインの利尿作用をまとめたメタ解析でも、影響は摂取量や活動状況などによって変わることが示されています。休息時と運動時で同じではなく、研究対象の違いもあります。

そのため「何杯までなら絶対に水と同じ」「○mgを超えたら飲んだ分がすべて無効」といった一本線を、これらの研究から導くことはできません。コーヒーやお茶を日常の水分摂取の一部として考えつつ、カフェインそのものの摂り過ぎや睡眠への影響などは別の観点として管理するのが自然です。

お茶も一括りにしない

「お茶」といっても、緑茶、紅茶、麦茶などではカフェインの有無・量が異なり、抽出条件でも変わります。BHI研究に茶が含まれていたからといって、すべてのお茶・濃さ・量で同じ結果になると考えるのは広げすぎです。

普段の水分補給で何を選ぶかは、カフェイン以外にも糖分、塩分、エネルギー、飲みやすさ、暑熱・大量発汗などの状況を合わせて考えます。飲料全体の選び分けは水分補給は何を飲む?へ進んでください。

Sipはコーヒー・お茶をどう記録している?

Sipの現在の実装では、コーヒーとお茶を別カテゴリとして記録できます。アプリ内部では水分量を換算するための独自係数があり、水1.0、通常時のコーヒー1.0、お茶1.0などが設定されています。コーヒーはアプリ内で推定する一日のカフェイン量が300mgを超える場合、係数を0.9にする処理があります。

またカフェイン量は、コーヒー0.4mg/ml、お茶0.2mg/mlという固定値でアプリ内推定されています。実際の飲料のカフェイン量は種類・濃さ・容量などで変わるため、これを精密な実測値とは扱いません。

研究とSipの係数を混同しない

  • BHI原著がSipの「1.0」「0.9」という係数を定めたわけではありません。
  • SipのnetHydrationはアプリ内の記録・表示用ロジックであり、利用者の体内水分量を直接測っているわけではありません。
  • 「BHI搭載だから医学的に正確な水分保持量が分かる」とは説明しません。

1日の総量を考えるときは、飲料だけの議論にしない

コーヒーやお茶を水分としてどう数えるかだけに集中すると、食事由来の水分や日々の活動量を見落としやすくなります。「1日2L」などの数字をどう読むかは1日の水分量はどれくらい?でtotal waterと飲料を分けて確認できます。

参考にした研究

個別のカフェイン制限や医療上の指示がある場合は、その指示を優先してください。